『認知症の基礎知識』
認知症とは?
認知症について、「意思疎通や相互理解が困難」、「もの忘れがひどく頑固になる」、「被害妄想が激しい」、「徘徊をする」、「身内だけでなく自分のことも忘れてしまう」、「何度でも同じ事を繰り返す」、などのイメージが多いようです。
様々なイメージがありますが、では認知症とは何か? 認知症は『脳の病気』です。
脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の気質的な変化により、日常生活に支障が生じる程度にまで、記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態をいいます。認知症は高齢期では誰にでも起こる可能性があります。
物忘れと認知症の違い
人は年を重ねるにつれ脳の神経細胞の減少(老化)の影響で、誰にでも「物忘れ」は起こりえます。
年相応の物忘れと認知症の物忘れはどのように違うのでしょうか。年相応の物忘れは体験の一部を忘れるのに対し、認知症の物忘れは体験の全てを忘れます。例えば、食べたメニューを忘れるのが年相応の物忘れで、食べたこと自体を忘れるのが認知症です。
また、年相応の物忘れには自覚がありますが、認知症の物忘れには自覚がありません。
忘れ方の違い | |
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加齢に伴う | 認知症 |
体験の一部を忘れる | 体験の全部を忘れる |
物忘れを自覚している | 物忘れの自覚がない |
別の機会に思い出される | 思い出せない部分に作話が混じる |
認知症の種類と原因
認知症の原因となる疾患は様々です。日本で多いのはアルツハイマー型認知症と血管性認知症です。
1.変性疾患 | |
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(1)アルツハイマー型認知症 | |
(2)非アルツハイマー型認知症 | ?レビー小体型認知症 ?前頭側頭型認知症 ?ピック病 ?パーキンソン病により認知症 その他 |
2.脳血管障害 | |
(1)血管性認知症 | ?脳梗塞 ?脳出血 |
3.その他の原因疾患 | |
(1)内分泌・代謝性・中毒性疾患 | ?甲状腺機能低下症 ?肝性脳症 その他 |
(2)感染症疾患 | ?クロイツフェルト・ヤコブ病 ?HIV脳症 その他 |
(3)腫瘍性疾患 | ?原発性脳腫瘍 ?転移性脳腫瘍 |
(4)外傷性疾患 | ?慢性硬膜下血腫 ?頭部外傷後遺症 |
(5)その他 | ?正常圧水頭症 ?多発性硬化症 ?サルコイドーシス その他 |
認知症の症状
認知症の症状は中心となる症状(中核症状。必ず見られる症状)と、それに伴って起こる症状(周辺症状。必ず見られるとは限らない症状に分けられます。
中心となる症状とは「記憶障害」や「判断力の低下」などです。周辺症状は人によって差があり、怒りっぽくなったり、不安になったり、異常な行動がみられたりすることがあります。
中核症状
中核症状…病気等により脳の細胞が壊れ、その細胞が担っていた機能が失われたために生じる症状です。
記憶障害 | ・さっき聞いたことが思い出せない。 ・覚えていたはずの記憶が失われる。 |
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見当識障害 | ・時間、季節、場所等の感覚が分からなくなる。 ・道順などが分からなくなる。 |
理解・判断力の低下 | ・考えるスピードが遅くなる。 ・いつもと違うことで混乱しやすくなる。 |
実行機能障害 | ・前もって計画を立てることができない。 ・家電や自販機などが使いこなせない。 |
周辺症状
周辺症状…「中核症状」により生活上の困難にうまく適応できない場合に、本人の性格、環境、身体状況が加わって起こる症状です。
妄想・幻覚・不安・依存・徘徊・攻撃的行動・睡眠障害・介護への抵抗・異食・過食・抑うつ状態など
認知症の方へのケア
認知症の方への適切なケアや対応をするためには、認知症は病気であるということを理解し、正しい知識を持つことが大切です。その人のありよう・その人らしさを尊重し、受容して下さい。
特に行動・心理症状は心理的な要因が作用して表れます。適切なケアを行うことで心理的ストレスが軽減され、行動・心理症状が軽減されることがあります。
認知症の症状がみられる病気の中には早期発見・早期対応により治療可能なものがあります。専門の医療機関への相談・受診をお勧めいたします。
2011/7/10